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世界のどこか。あなたの知らない世界。
偶然が交わった、ある日の世界。
【Novel】
家出少年、家無き子
リンクスは最大の問題に直面していた。
駅ではがやがやと、家に帰る子供たちの声で溢れている。
世間は夏。夏季休暇。
ホグワーツでの夏季休暇は全員家に帰ることが決まっている。
そう。この男、家出をしているため家に帰ることができないのである。
リンクスは魔法学校に入学する前に家出をした。
家には失踪届を律義にも出している。校長にも交渉しているので捜索もされていない。
だからこそここまで悠々自適に学校生活を満喫しているわけなのだが。
……成績に関しては実家に届いていそうだが。そこを交渉したかどうかはよく覚えていない。してなかったかも。
それに関してはどうでもいいのだ。干渉されなければそれでいいと思っている。
それはそれで置いておいて。
クリスマス休暇やイースター休暇はホグワーツに残っていても許されるので現実から目を逸らしていたが、このままでは家無き子である。
本格的にホームレスが視野に入ってきたことにリンクスは焦っていた。普通に問題である。
この状況に対して、キャリーケースを脇に頭を抱えるしかない。
「リンクス」
「ひょあぃ!?」
声を掛けられると思っていなかったリンクスは驚きで変な声が出た。
彼が振り向けば、声をかけてきたであろうフユト・カンナギが居た。
「……やあ、カンナギくん。こんな時間まで君が残っているなんて珍しいね。君はさっさと帰ってるものだと思っていたよ」
「俺とお前は同室だろう。君こそ帰らないのか……と言いたいところだが帰れないんだろ」
「……よくご存じで」
寮で同室な上に休暇時に帰らなかったことでなんとなく察していたのだろう。
気を使わせていることにリンクスは少し居心地が悪く感じた。
「まあ、俺は俺でどこかで———」
「行くぞ」
「ふぇ?」
カンナギはリンクスの腕を引っ張り、列車に乗り込む。
理解の追い付かないリンクスを余所に、座席を確保すると座った。
「えっ……え?どこ行くのこれ」
「俺の実家」
「は?なんで?俺としてはまあありがたいけど……急に押しかけても迷惑だろ」
「以前からお前を連れて行くことは実家に連絡してある」
「よ、用意周到なことで……」
あまりの準備の良さにリンクスは考えることを放棄した。
ため息を一つつくと窓の外を眺める。
「金目当て?」
「違うが。そもそも家出少年に求める方が酷だろ」
「それもそうか。……聞かないの?」
「何が?」
「……なんでも」
何も聞かないのだな、とリンクスは思う。
帰れない理由も、本名じゃない理由も、入学式に居なかった理由も。
同室であるのに必要なこと以外は何も聞いてこない男だ。
「こういう時ぐらい相談しろ。俺だって何かできるかもしれないだろ」
「変な奴だな、君は」
「君に言われたくないんだけど」
「それもそうか。そうそう、ジャパンではこういうんだっけ」
「「類は友を呼ぶ」」