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2-1.日常
「しっかし、冴月もよく探し続けるよね。前世の話、本当は夢だったとか言うオチじゃない?」
「夢だったらよかったんだけどね……」
冴月莉緒は手元のくすんだ宝石を見つめる。
おぼろげな記憶を頼りに前世の故郷に戻った時に探し当てたもの。
これがあることで、その記憶が嘘でも夢でもないことを決定づけていた。
あまりにも真剣に見つめるものだから、紅葉……一ノ瀬紅葉は茶化したことを少し後悔した。
「それ、結局なんなの?ただの石にしか見えないんだけど」
「転移宝石……だったものって言えばいいのかな。彼が作った、願えばどこにでも行ける道具なんだって」
「だった……ってことはもう使えないのか。っていうか、使えたら使ってるよね。君のことだし」
莉緒が何度願おうとも、その宝石は何も答えてくれなかった。
あくまでも魔術式と魔力を石に組み込んでいるだけなので、一度の使用で力を失うような代物だった。
「またやってる。進展あったの?」
ひょこっと扉から顔を出す陽菜。
彼女だけ中学生なのでどうしても時間がずれがちだったが、暇を見てこうして集まってくれていた。
「生憎何も進んでないよー。こうして何も進まないなら、現地調査……って言ってもなぁ……」
「現地って国外でしょ?私はさすがに無理だよ」
「さすがにそこまで付き合わせるのは申し訳ないから、俺だけで行くよ」
「なあ、冴月。大丈夫なのか」
帰り道、紅葉がぽつりとつぶやく。
「何が?」
「いくらなんでも、人知を超えた存在を相手に安全なんて保障されてないだろ……」
「それでも、俺は彼を探したい」
莉緒の真剣な言葉に、紅葉は息を吞む。
少しして、やれやれというようにため息をついた。
「はいはい、止めたって無駄なことは最初から知ってたさ」
「あはは。まぁ、いつか帰ってこなかったらそういうことってだけだよ」
「……笑い事じゃないよ」
紅葉は少しだけ悲しそうに笑った。
「無理だけはしないでね」
「目的が達成できるまでは、ちゃんと帰ってくるよ」