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1-6.秘密の作戦
うつら、とノワールは暖かな日差しに舟をこぐ。
天界とは違う日差しに、青々と茂る木々。
今日は天気がいいからか、風が優しくそよいでくる。
「……ん」
ノワールは足音に目を開く。そこには、一人の少年が立っていた。
「おはよう、ノワール。まだ眠いの?」
「ううん……キサが来るのが遅いから」
「仕方ないでしょ……組織に所属してるんだから、そんなに時間なんて空けれないよ」
キサはため息をつく。
ノワールも天使という組織に所属してはいるが、基本的に任務以外は自由行動をしている。
天界とは大違いだな、とノワールは内心思った。
出会った日から数日、キサとノワールは日中の時間を共に研究所内部への侵入に充てていた。
最初は許可がないから立ち入れないと渋っていたキサだが、ノワールが強引に巻き込んだために次の日からは諦めて一緒に行くようになっていた。
「キサの組織って、最初に会った日に一緒にいた長い髪の人と同じ?」
「あぁ、そうだね。……知ってたの?」
「ううん。そうかなって」
「……どうかした?」
「……あの人、嫌な予感がする」
ノワールはそう言いながら、キサの服の裾を掴む。
「あの人って……冬宮のこと?」
「……名前は知らないけど、キサといたあの人」
「そう?僕はそうは思わないけど……」
「でも、なんか嫌な感じがする。見てるだけでぞわぞわするし、それに……」
ノワールはそう言うと、キサの服をさらに強く握る。キサはその仕草に苦笑する。
「心配性だなぁ。でも、気をつけることにするよ。僕もあの人が何考えてるのかよくわからないし」
「……キサもわからないんだ?」
「まぁね。今朝だって昨日帰ってきた時についてた部屋の明かりがそのままだったし」
「……冬宮っていう人は寝ない人?」
「さぁ……?」
ノワールの問いにキサは首を傾げる。
「まぁ、今はいいでしょ。早く行かないと」
キサはそう言うと、ノワールの手を引く。
ノワールも歩き出す。二人は再び研究所内部への侵入を目指すのだった。
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「……またか」
灰色はそう呟きながら、目の前の扉を見る。そこには『■■■■■■』と書かれていた。
「はぁ……ガキの遊び場じゃねえんだよ」
灰色はため息をつくと、扉を開ける。扉の奥にある部屋に入り、あたりを見渡す。
そこには誰もいなかったが、部屋の隅にいくつか血痕が残っていた。
そして、灰色の目に留まったのは壁に書かれた『たすけて』の文字。
灰色はその文字をじっと見つめる。そしてその文字に手を伸ばすとそっと指でなぞった。
年月が経ったその文字たちはボロボロと崩れ落ちていく。
「助けなんて、くるわけねぇだろ」