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1-5.調査報告

「キサ、これ」

キリルはそう言うと、一冊のファイルをキサに渡した。

「これは……?」
「当時の記録……のコピーだけど。冬宮がお前に渡せって言ってたから」


キサはファイルを受け取る。
 

「ありがとう」
「ん」

 

キリルはそれだけ言うと、部屋を出て行った。
キサはファイルを開くと、中身に目を通す。
そこにはあの研究所が崩壊した時の記録が残されていた。

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報告案件 ウィルダーネス研究所崩落に関する調査
報告者  ディヴァインシュガー 冬宮

提出先  ディヴァインシュガー キリル

調査の趣旨
■■■■年■月■■日未明、遠くから爆発音等が聞こえたと人間領より証言。
翌日■■日、上空観測からウィルダーネス研究所が崩落していることを確認。
協定により立ち入り調査を実行。

 

調査方法
期間:■■■■年■月■■日~■月■■日
対象:ウィルダーネス研究所及びその周辺
方法:現地調査、魔術による測定

 

調査結果概要
外部による犯行と推定。

調査詳細
再崩落の危険性があるため、魔術で空間を固定し、立ち入り調査を実行。
内部を確認したところ、■■■■・ウィルダーネス、■■■■・ウィルダーネス両名の死体を発見。

他にも数十名の研究員の死体を確認。

当方の判断では死因は銃弾もしくは刃物による失血死。遺体は人間領に引き渡した。

研究資料に関しては大多数が焼失。爆破された時に火災が発生したか。

残存資料は保存作業後、人間領と保管するのか処分するのか等検討。

研究体に関しては確認できず。森林奥地のため、存在していたのか脱走したのかも不明。引き続き警戒。

​…………

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ファイルを読み終えたキサは、小さくため息をついた。


「……人間領と資料を保管するか検討できるってことは、あの研究に関しては全部焼失したってことだよね。都合よすぎない?」


キサは一人呟く。
証言を出しそうな人物は消されている。研究体は行方不明。発見したという報告もない。人間領がわざわざ調べたがるとも思えない。
そして、キサは外部犯に関して心当たりがあった。
あの研究所が崩壊する直前。目の前に現れた見知らぬ灰色。あれがきっと犯人だったのだろう。

 

「でも、なんで?」
 

キサは考える。
なぜ、あの灰色は研究所を破壊したのか。
なぜ、見知らぬ自分たちをわざわざ逃がすような真似をして、研究がなかったかのように全てを消したのか。
灰色の行動に、キサは疑問しか浮かばなかった。

「……まぁ、今考えても仕方ないか。少し休んでからまた考えよう」


キサはそう言うと、ファイルを棚にしまいこんだ。
そして、自室のベッドに倒れこむ。


「はぁ……疲れた」
 

キサはそのまま眠りについた。

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