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1-4.化物の心配事

キサが研究所から出ると、そこには冬宮が立っていた。

「君さぁ……勝手に行くなってあれほど言ったじゃないか!何かあったら責任を問われるのは僕なんだよ!?」
「……ごめん」

キサが素直に謝ると、冬宮はため息をつく。そして、小さく呟く。

「まぁ、いいけどさ……いや、良くはないのか……で?何か成果はあったの?」
「いや……何も無かった」
「そうかい。まぁ、君が無事ならいいよ。帰ろうか」

冬宮はそう言うと、歩き出す。キサもそれに続く。

「冬宮は、天使に会ったことがある?」

 

キサがそう声を掛けると、冬宮が立ち止まって振り返る。


「んぇ?何の話?」
「……いや、なんでもない」

キサはそう言いながらも、冬宮を見る。
冬宮はこの研究施設が崩壊した時の調査を担当していたらしい。
彼ならノワールのことを知っているかもしれないと思ったが。
知らないのなら、彼女が出入りしているのは最近のことなのだろうか。
キサはそんなことを考えていた。

「……キサ」
「何?」
「あの研究所の崩壊当時の記録なら、キリルが持ってる」
「え?」
「気になるんでしょ?見られて困るものじゃないし、君に貸し出すように言っておくよ」

冬宮はそう言うと、再び歩き出した。キサもそれに続く。

「……いいの?」
「見られて困るものじゃないって言ったでしょ?それに、あの場所を調べることが君の目的なんだから。……まあ、参考資料程度にしかならないだろうけど、それで君が勝手に行動しないでくれるなら安いもんだよ」
「……ごめんって」


キサが謝ると、冬宮は苦笑した。

そのまま二人はディヴァインシュガーの拠点へと戻っていった。

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