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1-2.ウィルダーネス研究所

翌日、朝早くから二人は廃墟となった研究所へと向かった。
そこは大きな建物だった。
コンクリートでできた壁にはヒビが入り、ガラスは全て割れている。

「相変わらず酷いな……で、ここで何を調べたいの?」

冬宮が呆れた様子で言う。
キサはその言葉を聞いて、研究所の入り口へと向かう。
入り口には、大きな扉があった。
しかし、その扉も半分ほど壊れ、無防備な状態になっていた。
キサはそこから中へと入っていく。

「ちょっと待てって、勝手に行かないでよ!」

慌てて追いかけてくる冬宮を無視して、キサはどんどん奥へ進んでいく。
研究所の中はかなり荒れ果てており、瓦礫などが散乱している。

崩壊した当時から10年ほどが経過している。建物の中をまだ歩ける状態なのが不思議なぐらいだ。

「ねえ!どこまで行く気!?」
「もう少し先まで」
「君ねぇ……」

追いついてきた冬宮はため息をつくと、諦めたようにキサの後ろを歩き始めた。
少し歩くと、キサは足を止める。
そこは大きなホールのような場所だった。
辺りには機械の残骸が散らばり、一部は壊れているものもある。

「ここに何かあるの?」

冬宮が尋ねると、キサは無言で頷いた。
そして、そのまま奥へと進んでいく。

「多分、実験場だ」
「実験場?なんの?」
「わからない。そういうのは冬宮の方がわかるんじゃないの。研究者なんだし」
「あのさぁ、ここの研究所の主だったウィルダーネスは生体研究者だよ。僕は魔術研究者。ジャンルが違うんだよ、ジャンルが。専門外だって」

「でも、崩壊当時に調査担当したんでしょ」

キサの言葉に冬宮は不満げな表情を浮かべつつも、しぶしぶと機械を調べ始める。

「全く……本当に何の機械だよこれ……ああもう、ここも飛んでる……。爆発したのか?それにしては……ねえ、キサ。その辺にさぁ…………キサ?」

冬宮が振り返ると、そこにキサは居なかった。
冬宮は慌てて周囲を見回す。しかし、どこにもキサの姿はない。

「……ま~じで?僕嵌められてんの?嘘でしょ?」

冬宮はその場に立ち尽くしていた。

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