「そういえば、君って名前あるの?」
クルクルと試験管を軽く回しながら、冬宮は🌐🎹に問うた。
「え、灰猫ちゃんってそういう……呪いとかできるのか?」
「は?しないけど」
🌐🎹の言葉に、冬宮は心底呆れたような声色で答える。
その表情には先ほどまでの不機嫌さはなく、ただひたすらにめんどくさそうな顔をしていた。
「何、そんなことするように見えたわけ?」
「じゃあ、なんで名前なんて……」
「いや、だって。君の名前知らないし」
冬宮は当たり前のように言い放つ。
それを聞いた🌐🎹は、しばらく悩んだ後に小さく口を開いた。
「……灰猫ちゃんが好きに呼んでくれていいよ」
「なんだそりゃ」
「ほら、俺って結構いろんな呼ばれ方してるからさ、どれでもいいかなぁ~みたいな?」
「あっそ。じゃあ適当に呼ぶわ」
冬宮は興味を失ったかのように、そのまま視線を🌐🎹から逸らした。
そして手に持っていた試験管をゆっくりと机の上に置くと、今度は自分の魔導書を見つめる。
「……仮面野郎」
「……灰猫ちゃんってもしかしてネーミングセンス無い?それむしろ悪口だね?」
「君が好きに呼べって言ったんだろ」
「確かに言ったけどさぁ……もっとかわいい感じでお願いできない?」
「無理」
冬宮は即答する。
すると、それを見ていた🌐🎹は困ったように笑った。
「まぁ別に何でもいいんだけどさ、俺的にはもう少し可愛く呼んで欲しいっていうか……」
「そう渋るってことは何でもよくはないってことなんだよ、仮面野郎」
「だからそれはやめてってば!」
🌐🎹が必死に抗議するも、冬宮はそれを完全に無視している。
だが、横目で🌐🎹の方を見ると、ぽつりと呟いた。
「……『мираж』」
「へ?」
「別に、なんでもない」
そう言って、冬宮は再び視線を試験管に向けた。
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