☔ざあざあと雨が降り続く。 通り雨だと思ったそれは、なかなか止みそうになかった。 大樹の下に腰を下ろしたまま、雨が止むのを待っていた。 濡れるのは嫌いだ。嫌なことばかり思い出す。 飛び交う罵詈雑言、奇妙なものを見る視線、ぐちゃぐちゃと不定形で境界線が曖昧なーー 「……はあ」...
2023年バレンタインの話。これをどうしようか、と。 冬宮紀沙は一人、机に突っ伏していた。 バレンタインデー。 恋人や家族など大切な人に贈り物をする日。 (なんでこれ、用意したんだろう) 彼はそれを眺めてため息をつく。 丁寧に包装された箱。中身はもちろんチョコレート。...
鉄屑と水泡「ねー、それまだ時間かかるの?もう資料読み飽きたんだけどー」 作業机に頬を乗せながら、冬宮が呟く。 その視線の先で、彼ーーーエーリアルは魔導銃の整備をしていた。 「……もう少し待て。そして邪魔をするな」 「い”っ」 そう言って、冬宮にデコピンをした後、彼は淡々と銃を分解し掃...
「海には連れてきただろ、遊ぶとは言ってない」「ほーら、フユミヤも行こうよ~!」 「いや無理……眠いから寝かせてくれ……」 ビーチテントの中で寝転ぶ冬宮を引きずり出そうとするトキハ。 だが、冬宮は本当に疲れているのか中々起きない。 体格差もあってなかなか外に出せずにいるトキハに、ミナトはひやひやしていた。...