「ほーら、フユミヤも行こうよ~!」
「いや無理……眠いから寝かせてくれ……」
ビーチテントの中で寝転ぶ冬宮を引きずり出そうとするトキハ。
だが、冬宮は本当に疲れているのか中々起きない。
体格差もあってなかなか外に出せずにいるトキハに、ミナトはひやひやしていた。
「トキ……無理に連れてかなくてもいいと思う」
「えぇ!? でもせっかくの海だよ!一緒に遊ぼうよぉ!!」
「私も、海で遊ぶよりお昼寝したいなぁ……」
「ミナもなの!?」
そう言って目元を擦るミナトに、トキハは頬を膨らませる。
そんなトキハを見た寒月が口を開いた。
「はいはい、じゃあトキハは寒月と遊びに行こうか~?」
「うん!! 行こっ、寒月ちゃん!」
「は~いはい。じゃあお留守番頼んだよ、ふゆふゆ」
「へいへい」
元気よく駆けていく二人を見送ると、冬宮は再び目を閉じる。
すると、ミナトが隣に座ってきた。
冬宮は不思議そうにそちらに目を向ける。
「……ねぇ、フユミヤ」
「ん……どうしたの?」
「海は嫌い?」
「……水が嫌いなだけ」
「そっか」
それだけ言うと、ミナトは黙り込む。
何か考え事をしているような表情だ。
不思議に思いながらも、冬宮はそのまま目を閉じた。
しばらくするとミナトが小さく呟いた。
「あのね、フユミヤ」
「……なに」
「嫌いなのに連れてきてくれてありがと」
「……別に、暇だったし」
「ふふ、フユミヤって意外と嘘ばっかだね」
「……」
その言葉に、冬宮は何も答えなかった。
代わりに小さく息を吐くと、ゆっくりと目を開ける。
目の前には微笑むミナトの顔があった。
「……何笑ってんのさ」
「ううん、なんでもないよ」
「はぁ……ガキはガキらしくしてればいいんだよ」
冬宮は少々乱暴にミナトの頭を撫でる。
それでもミナトはされるがままになっていた。
「そうだよね。私ももっと子どもっぽくしないと」
「……まあ、トキハが子供過ぎるからちょうどいいんじゃねえの」
「うん。私もそう思う」
それから二人は何も言わずに空を見上げる。
雲一つ無い青空に、眩しい太陽が輝いていた。
波の音が響く静かな空間の中、不意にミナトが口を開く。
「ねぇ、フユミヤ」
「ん?」
「またこうして皆と一緒に海に来ようね」
「……そうだね」
穏やかな笑みを浮かべながら話すミナトの言葉に、冬宮は少し間を開けてから返事をした。
そしてそのまま視線を落とすと、静かに目を閉じて眠りにつく。
その様子を見てミナトも冬宮の隣に寝転ぶと、静かに眠りについた。
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