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星瞬く時


この世界は箱庭。

私たちと、私たちが作り上げた存在で管理された箱庭。

見上げる空は変わる事のない、無機質な青色。

でも、それがこの世界の。この場所の在り方。


ある日、神の一柱が言った。

地上へと堕ちた、罪人であるミカエルを捕縛しろと。

誰も反論はしなかった。

それは正しい行いだったから。

七大天使からの離反者は、ただの天使の反逆とは違う。

それだけで大きな影響を及ぼしてしまうから。


例え、友人であったとしても。





ふわり、と。都市から少し離れた地面に降り立つ。

初めて来たこの都市は、夜の暗がりの中でも酷く眩しかった。

神への信仰がそのまま形を成したような街。


それでも、私は見つけた。見てしまった。

この地上から見る遠い星のように、太陽の光にかき消されてしまうような微かな星を。

信仰に紛れて見えなくなっている、でもそこに確かにあるこれは。


「……君は星なの?」


ふと、後ろから声がした。

振り向けば、そこには一人の瞬く星が立っていた。


「……さあ、どうだろう。わからないや」


私は曖昧に答える。星なんて言われたのは初めてだ。

太陽の運行を司る私に星の名前はあまりに不釣り合いだろう。

でも、太陽だって惑星か。なんて心の中で笑う。


「私が星かどうかはわからないけれど、空から見たあの街はまるで夜空に輝く星々みたいに綺麗だったよ」


素直な感想を告げれば、星の彼は不思議そうな顔をした。

あの都市から感じた、かすかに残る光とこの少年から感じる光は、まるで小さな星屑のようで。

小さな願い。あの光は彼が残した願いなのだろうか。


「地上ってとっても綺麗なんだね!空から見た地上は遠くてよく見えなかったから。地上から見る空もこんなに綺麗……!地上はどこもかしこもキラキラしてて、すごく素敵」


この少年には、あそこはどんな風に見えているのかな。

きっと、私とは違うのだろう。

でも、それでいい。

彼と私は違うから、同じものを見てもきっと感じ方が違う。

だから、私は彼に聞いてみたかった。

君が願う綺麗な星のことを知りたかった。


「ねえ、君はもっと綺麗なものを知ってるの?それなら見せてよ!私はもっとこの街のことを、

──────君のことを知りたいな!」





私は神に、私たちの天界から離反するつもりはない。

現に私の頭上にある輪も、包み込むような羽も、黒く染まることはなかった。


「私は何時だって君の傍にいるよ。君が君の願いを守るなら、私はそんな君を守り続ける」

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