寝起きあのときの感覚は未だに覚えている。 薄れゆく意識の片隅で思ったのは、僕は彼を信じていたんだという、思考だった。 *** ゆっくりと意識が浮上する。瞼を開けば、見慣れた天井。 いつもと違うところといえば、僕の視界に彼がいることだろうか。...
春の日穏やかな日差しが差し込む。 隣に温かな熱を感じながら、今日も朝を迎えれたのを実感する。 腕の中では静かな寝息を立てる紀沙がいる。 以前に紀沙は食事も睡眠も呼吸も本来は必要としないと言っていたけれど、必要がないだけなんだろうと思う。 「ん……」 どうやら紀沙が起きたようだ。...