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「I wish you a merry Christmas.」

 ※ヴァーメル、GL




 クリスマスとは良い子のための行事である。


 はるか昔……いや、そんなにではないけれど。

 まだ10もいかぬほど幼かった自分にも、サンタクロースは来た。

 枕元に置かれた小箱には木でできた小さな置物が入っていて、大切に飾っていたのをよく覚えている。







 あの日までは。


 戦火は、全てを焼いた。

 家も、村も、家族も。

 そしてオレは、将官に拾われて人殺しの軍人になった。


 だからもう、サンタクロースにプレゼントをもらえるような良い子ではないんだ。

 そう、思っていた。





 そう思っていたから、オレは早朝に目を覚まして。そこにあった物に動揺を隠せなかった。


「くくくくく、クヴァメルぅ!!!!?」

「ひゃ、ヴァーツさん!?ど、どうしたんですか。そんなに慌てて……」

「こ、これ……」


 そう言ってオレはクヴァメルに、抱えていたものを見せる。

 それは丁寧に包まれた箱だった。


「あ、それ……サンタさんですね」

「え?」

「え?」


 オレは、クヴァメルの言っている意味が理解できなかった。

 サンタ?あの?

 クリスマスに枕元に置き配していくあのサンタクロースのことだろうか。


「サンタさんはご存知ですよね?」

「い、いや。さすがに知ってるが……」

「そのサンタさんが、ヴァーツさんへのプレゼントを持ってきてくださったんですよ」

「……え?」


 そんなわけがない。

 あの年から、サンタクロースなんて一度も来なかった。

 人殺しは正義になっても悪いことだから。だから、オレは悪い子のはずで。

 サンタクロースなんて来るわけもなくて。


「いや、でも……オレは……悪い子だろ」

「ヴァーツさんは、悪い子なんかじゃないですよ。サンタさんからプレゼントをもらえる良い子です」

「……そっか……そう、なのか……」


 良い子とは、何だっただろうか。

 幼い頃は、きっと良い子だったのだろう。

 しかし、今は?

 死体を起こす冒涜をして、人殺しをして、軍部も国も裏切って全てを滅ぼしたオレは本当に良い子だとでも?


 でも、腕の中の箱は現実に存在していて。


「……クヴァメル。オレは、良い子か?」

「ええ。ヴァーツさんは、とても良い子です」

「そっかぁ……はは。陸と海の中じゃあ、良い子の基準が随分と違うんだな」


 オレは、サンタクロースからのプレゼントを、大事に抱えた。

 オレが良い子だったのか、それはまだ分からないけれど。

 それでもきっと今だけは、幼いあの頃を思い出してもいいはずだから。

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